刻(とき)の断罪 ―真紅の絆―
ホテルのエントランスから部屋へ向かおうとしたその時、不意に強い力で翔の腕が引かれた。
「……そこまでだ」
現れたのは、一柳奏だった。驚愕に目を見開く翔をよそに、奏は京太郎を鋭い眼光で射抜く。
「貴様、俺の女に何をする! どけッ!」
激昂する京太郎に対し、奏は一歩も引かずに言い放った。
「彼女は私の婚約者です。これ以上不当な勧誘を続けるなら、弁護士として職権を使い、あなたを訴えます。身の程をわきまえなさい」
その威圧感に毒気を抜かれた京太郎は、捨て台詞を残して逃げるように去っていった。

「…何をするの、あなた! 邪魔をしないで!」
知らない男を装い、翔は鋭い声を上げた。追いかけようとする翔を、奏は強引にホテルの別室へと連れ込んだ。
「離して! 見ず知らずの他人に、偉そうなことを言わないでちょうだい!」
翔は冷たく突き放そうとするが、奏の瞳には真剣な光が宿っていた。
「もっと自分を大切にしてください。……お金が必要なら、僕がすべて用意します」
「…責任、取ってくれるの? お客を逃した分、あなたが払ってくれるっていうの?」
窮地に陥った翔は、あえて挑発的な言葉をぶつけた。正体がバレることを恐れ、何とかこの場を切り抜けようとしたのだ。だが、奏の返答は翔の予想を遥かに超えていた。

「…本当に、僕と結婚してください。そうすれば、あなたが必要とするすべてを、僕が生涯かけて用意します」
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