刻(とき)の断罪 ―真紅の絆―
朝方、カーテンの隙間から差し込む薄明かりの中で、翔は静かに身を起こした。隣では、奏が安らかな寝顔で深い眠りについている。
奏はまだ、自分が抱いた女性が「月永副社長」であることに気づいていない。名も知らぬ美女との、刹那の恋だと思っている。

「……これでいい」

翔は音を立てずに服を着替え、鏡に映る乱れた髪を整えた。
「もう二度と、恋もしない。結婚もしない。私は、お兄ちゃんのために生きると決めたんだから」
自分に言い聞かせるように、翔は一度だけ奏の背中を振り返り、無言のまま部屋を後にした。
ホテルの外に出ると、冷たい朝の空気が頬を刺す。翔は再び「月永副社長」という冷徹な仮面を被り、京太郎という標的が待つ闇の中へと歩き出した。
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