刻(とき)の断罪 ―真紅の絆―
ゆっくりと振り向くと、そこにいたのはこの世の人とは思えないほど優しい表情の堀の深い長身の男性だった。
「すみません…月永グループのビル…どちらでしょうか?」
片言の日本語をしゃべる男性。
だが翔は、その声に聞き覚えがあった。
「月永グループは、我が社です」
そう答えた翔に首を傾げた男性を見て、翔は英語で答えた。
「Tsunaga Group is my company. If you’d like, I can take you there.」
(月永グループは私の会社です。よろしければ、そこまでお連れしますよ。)
すると男性は優しい笑みを浮かべた
「Yes, please. That would be great.」
(はい、お願いします。そうしていただけると助かります。)
男性と一緒に歩き出した翔。
隣りにいる男性は、英語で翔に話しかけてくるが、翔は悠長な英語で対応していた。
ビルに到着すると月永社長が出てきた。
「お待ちしておりました」
男性はどうやら商談のためにきたようだ。
「有難うございました。…あの…一つ教えて下さい…」
男性は翔の耳元に近づいてそっと言った。
「あなたは何故、男性の恰好をしていますか?」
驚いた目で翔は男性を見た。
「…とてもお美しいのに、勿体ないです…。次、お会いするときは是非、女性としてお会いしたいです…」
それだけ言うと、男性は月永社長と共に社長室へと向かった。
翔は複雑そうな顔をしている。
胸の鼓動がうるさいほどに鳴り響いている。
「…ダメだ。絆されてはいけない。私は、あいつらを地獄に落とすまでは……止まれないんだから」
副社長室へ戻った翔は、震える手で、翔は京太郎の最新の動向を記した極秘資料を握りしめた。復讐の舞台は、もはや後戻りできない最終局面へと加速し始めていた。