刻(とき)の断罪 ―真紅の絆―
その後、淳也を待っていたのは、人間としての尊厳を奪う拷問の日々だった。異国の監獄へ移送された彼は、捏造された証拠と裏切りの連鎖の中で、孤独な死を迎える。

日本では、淳也の「病死」の一報が届き、美晴は狂わんばかりに号泣した。
「淳也さんのいない世界で、どうやって生きていけばいいの……」
泣き崩れる彼女の肩を、京太郎は慈悲深い聖職者のような顔をして抱き寄せた。だが、その裏で彼は大慈と顔を見合わせ、声もなく嗤っていた。

淳也の会社は倒産し、美浜大慈はその資産の大部分を不正に持ち出し、ほとぼりが冷めるまで海外へと逃亡した。残った利権を手中に収めた京太郎は、山分けした資金を元手に大手不動産会社を設立。かつての親友を「テロリスト」に仕立て上げた二人は、今や財界の覇者として君臨していた。

淳也の不当な死は、時が過ぎるにつれて人々の記憶から忘れ去られていった。

……しかし、たった一人だけは違った。


十五年後の、突き抜けるような晴天の空の下。
こじんまりとした寂しげな墓地に、一人の美しい女性が立っていた。
彼女は淳也の墓前に、綺麗な白いバラの花を生けると、そっと祈りを捧げた。

「…お兄ちゃん。この日を待っていました。必ず、あなたの無念を晴らします」

それだけを言い残し、彼女は去っていった。その足取りには、十五年分の憎悪と、揺るぎない覚悟が宿っていた。

ビルの屋上に一人佇む、月永翔(つきなが しょう)。



翔の目の先には、あの忌々しい結婚式場のあるホテルが、陽光を反射して輝いている。
「まずは、一人目……」

冷酷な笑みが、その端正な横顔を歪めた。
こうして、真紅の復讐劇は幕を開けた。

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