刻(とき)の断罪 ―真紅の絆―
十五年前、兄・淳也が美晴と永遠の愛を誓い、そして奈落へと突き落とされたあの因縁のホテル。その豪華絢爛な大広間では、美浜大慈が率いる「美浜建設」の創立記念パーティーが催されていた。
シャンデリアの光の下、成金趣味の極致とも言える派手な装飾に囲まれ、大慈は取り巻きたちと祝杯を挙げていた。しかし、その顔はどす黒く充血し、苛立ちを隠せていない。淳也から奪った資金を食いつぶし、放漫経営を続けたツケが、今まさに彼の首を絞めようとしていた。
美浜建設の社長となった大慈は、派手なスーツに身を包み、いかにも成金といった風情で、手元の資料をテーブルに叩きつけていた。連日の使い込みと経営悪化。焦りだけが募る大慈は、周囲の視線などお構いななしに、毒づいていた。
翔は、その男に見覚えがあった。かつての兄の親友であり、裏切りの首謀者の一人。翔は表情を一切変えず、静かに大慈の席の方へと歩き出した。
そして、すれ違いざま、わざと大慈の肩に、自らの肩を軽くぶつけた。
「痛ってぇ!どこ見て歩いてやがる、この野郎!」
「すみません…」
大慈が、狂犬のように青年を睨みつけた。
「謝れば済むと思ってんのか? 俺は美浜建設の社長だぞ! あんたみたいな、若造とは格が違うんだよ!」
青年は黙って大慈を見つめている。その無機質な瞳に気圧されたのか、大慈はさらに声を荒らげた。
「なんだその目は! 文句があるなら言ってみろ!」
青年は静かに内ポケットから名刺入れを取り出し、一枚のカードを差し出した。
『月永グループ副社長 月永 翔』
大慈は名刺をひったくるように受け取り、その名前を見た瞬間、態度を一変させた。
「……月永? ああ、あの急成長中の……! ほう、あんたが副社長か。……これは失礼した」
大慈の卑しい目が、計算高く細められる。その時、大慈の秘書が血相を変えて駆け寄ってきた。
「社長! 大変です! メインバンクから融資継続を断られました! このままでは不渡りが出ます!」
一瞬で顔色を土色に変える大慈。その隙を見逃さず、翔は静かに、獲物を追い詰める蜘蛛のように微笑んだ。
「……資金繰りでお困りですか? 投資家としての私と手を組めば、望むだけの金が手に入りますよ」
大慈の目に、汚い欲の火が灯った。
「……本当か? 副社長。あんたと組めば、俺はまた自由に金が使えるってわけか」
大慈は、この若き「救世主」が自分を地獄へ誘う死神であることに、まだ気づいていなかった。
シャンデリアの光の下、成金趣味の極致とも言える派手な装飾に囲まれ、大慈は取り巻きたちと祝杯を挙げていた。しかし、その顔はどす黒く充血し、苛立ちを隠せていない。淳也から奪った資金を食いつぶし、放漫経営を続けたツケが、今まさに彼の首を絞めようとしていた。
美浜建設の社長となった大慈は、派手なスーツに身を包み、いかにも成金といった風情で、手元の資料をテーブルに叩きつけていた。連日の使い込みと経営悪化。焦りだけが募る大慈は、周囲の視線などお構いななしに、毒づいていた。
翔は、その男に見覚えがあった。かつての兄の親友であり、裏切りの首謀者の一人。翔は表情を一切変えず、静かに大慈の席の方へと歩き出した。
そして、すれ違いざま、わざと大慈の肩に、自らの肩を軽くぶつけた。
「痛ってぇ!どこ見て歩いてやがる、この野郎!」
「すみません…」
大慈が、狂犬のように青年を睨みつけた。
「謝れば済むと思ってんのか? 俺は美浜建設の社長だぞ! あんたみたいな、若造とは格が違うんだよ!」
青年は黙って大慈を見つめている。その無機質な瞳に気圧されたのか、大慈はさらに声を荒らげた。
「なんだその目は! 文句があるなら言ってみろ!」
青年は静かに内ポケットから名刺入れを取り出し、一枚のカードを差し出した。
『月永グループ副社長 月永 翔』
大慈は名刺をひったくるように受け取り、その名前を見た瞬間、態度を一変させた。
「……月永? ああ、あの急成長中の……! ほう、あんたが副社長か。……これは失礼した」
大慈の卑しい目が、計算高く細められる。その時、大慈の秘書が血相を変えて駆け寄ってきた。
「社長! 大変です! メインバンクから融資継続を断られました! このままでは不渡りが出ます!」
一瞬で顔色を土色に変える大慈。その隙を見逃さず、翔は静かに、獲物を追い詰める蜘蛛のように微笑んだ。
「……資金繰りでお困りですか? 投資家としての私と手を組めば、望むだけの金が手に入りますよ」
大慈の目に、汚い欲の火が灯った。
「……本当か? 副社長。あんたと組めば、俺はまた自由に金が使えるってわけか」
大慈は、この若き「救世主」が自分を地獄へ誘う死神であることに、まだ気づいていなかった。