冷徹宰相様の嫁探し

私の妃になって欲しい

  
「あー、もう全然駄目な感じなんですよ~」

「……君は、毎度、私の元に宰相の愚痴を言いに来ているのかな?」

 アルベルトに連れられ訪ねた王子の執務室で、隣国の文書を翻訳して書き写しながら、マレーヌは言った。

「いやいや。
 お仕事もお手伝いしてるじゃないですか~」

 姉ほど語学に堪能なわけではないが。

 隣国の言葉は自国の言葉と似ているので、専門的な用語が入っていない限り、正確に訳せる。

「まあ、なかなか助かってはいるよ。

 君は有能だし。
 気を使わなくていいから。

 マレーヌ、やはり、私の妃とならないか?
 それもまた、仕事だと思えばよいではないか」

 いや、夫婦となるからには愛も欲しいですね、と思いながら、マレーヌはバリバリ訳していた。

 大きな窓からの日差しを背に浴びながら、王子は検閲済みの陳情書を読んでいたが。

 顔も上げずに訊いてくる。

「ところで、君は宰相のどこがそんなに好きなの?」

「あの容赦無くなじってきそうなところですかね?」

 なるほど、と王子は深く頷いた。

「私ごときでは、到底、君を満足させられそうにないとよくわかったよ」
と。

 マレーヌはデスクから顔を上げて言う。

「でも、そんな王子様だから、みんな好きなのです」

 王子も顔を上げた。
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