クールな年下男子と、甘い恋を。
 不安に突き動かされた私は、通りから細い裏道に入った。

 この細道は人がまばらだ。

 全力疾走している私に皆が驚いたような顔をしている。
 半乾きの髪がぼさぼさになっていくのがわかるけれど、それもどうでもいいことだ。

 とにかく急がないと!
 これ以上漣里くんを怒らせないためにも、早く、一刻も早く――

 突然、視界が滑った。

「!?」
 転んだと気づいたのは、身体の前面と、右膝を地面にぶつけてからだった。

 全身を打つ衝撃に息が詰まり、すぐには起き上がれない。
 鞄が斜め前に転がっている。

 周りの人たちが見てくるけれど、大丈夫? と聞かれたりはしなかった。
 熱中症になりかけたときと同じ。
 みんな厄介ごとには関りたくないから、見て見ぬふりをしている。

 私は恥ずかしさと痛みと戦いつつ起き上がった。

 転んだとき、変に捻ったのかもしれない。
 地面に打ちつけた右膝よりも、左足首がズキズキ痛い。
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