零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――

第二章「零班配属」

合格発表から二週間後、俺は大きめのトランクを引きずって、もう一度、鷹ノ宮学園の正門の前に立っていた。

石造りの門柱に、黒い鉄門。門の向こうにはまっすぐな並木道が伸びていて、その先に白い本校舎がどんと構えている。窓は左右ぴったり対称、屋根の上には古い時計塔、玄関前の芝生は定規で測ったみたいにそろっていた。

どう見ても名門だった。
それも、格式ありすぎる男子校だった。

「ほんとに入るんだねえ」

母さんがしみじみ言った。

「俺もまだ信じてないよ」

「当たっちゃったねえ」

「景品みたいに言うなって」

父さんは門の奥を見て感心したようにうなずいた。

「広いなあ。迷子になるぞ、直」

「縁起でもないこと言うなよ」

門の脇に立っていた案内係の上級生が、きっちり礼をした。

「新入生の有馬直さんですね。保護者の方は正門までです。ここから先は生徒のみでの行動となります」

「え、もう?」

母さんが目を丸くした。

「本校の規則です。記念撮影は正門の白線の外でお願いします」

ほんとに白線が引いてあった。
学校に「ここまで保護者」って線があるの、初めて見た。

母さんはあっさり線の外に下がった。

「じゃ、がんばって」

「軽いな!」

父さんはなぜか紙袋を差し出してきた。

「温泉まんじゅう。寮で配ると友達できるかも」

「作り方が雑なんだよ!」

案内係の先輩は表情ひとつ変えず、俺のトランクに札をつけた。

「荷物は寮まで運搬します。受付で学園手帳を受け取ったら、常に携行してください」
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