零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――
昼食は食堂だった。

長いテーブルに、A班もB班もC班もきれいに固まって座っているのに、零班だけ端のほうだった。隔離されてるのか、席がなかったためなのかはよくわからない。

火村はハンバーグを食べながら、さっき没収された小型鏡の改良案を語っていた。

「だから、角度を三度だけ――」

「食事中に工作の話をするな」

九条が言った。

白鷺は俺のトレーから唐揚げを一個奪おうとして、大河内に無言で箸を止められていた。

「豪、なんで有馬の護衛みたいになってるの」

「……弱いから」

「俺、守られてるの!?」

そのとき、食堂の中央を高等部の先輩が通った。

黒髪をきっちり撫でつけて、書類の束を抱え、歩き方まで模範解答みたいな人だった。胸の生徒会章が銀に光っている。

白鷺が小声で言った。

「見た?あれ、真砂迅先輩。高等部の生徒会書記」

「有名なのか」

「模範生で有名。歩く校則全文って呼ばれてる」

「嫌なあだ名だな」

「でも似合うだろ?」

たしかに似合っていた。トレーを置く音まで小さかった。あそこまできっちりしてると、逆にこっちが背筋を伸ばしたくなった。

さらにそのあと、秋月先輩が通りかかってこっちを見た。

「零班、午前で死んでる顔だね」

「先輩は元気ですね……」

俺が言うと、秋月先輩は笑った。

「一年の最初はみんなそうだよ。午後もがんばって」

白鷺がすかさず言った。

「秋月先輩、足音消すコツとかあります?」

「あるけど、まだ秘密」

「けち!」

「授業でやるかもよ」

その言い方が妙にひっかかったけど、そのときは深く考えなかった。
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