零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――
最寄り駅から送迎バスに乗り、さらに坂道を上がっていくと、窓の外の景色が少しずつ変わった。旅館も土産物屋もなくなって、背の高い木立と石塀が続く。やがて、重たい鉄の門が見えた。

鷹ノ宮学園。

門の内側にいた係の人は背筋がぴんと伸びていて、案内の声まで妙にきっちりしていた。受験生は何人もいたけど、みんな静かだった。親と一緒に来ているやつもいるのに、普通の受験会場みたいなざわざわがない。

廊下は磨かれすぎて光っていた。古い時計の針の音だけが、やけに大きく聞こえる。壁には歴代の校長らしい写真が並んでいたけど、どの顔もきっちり前を向いていて、笑っているのにどこか隙がなかった。

「なんだ、この学校……」

思わずそう漏らしたとき、前を歩いていた受験生がぴたりと立ち止まり、俺をちらっと見た。

その目つきが、中学校の受験生のそれにしては妙に鋭かった。

しかも、案内の先生が角を曲がる瞬間、ほんの一瞬だけ廊下の奥を確認するみたいに視線を流したのを、俺は見逃さなかった。

普通の学校なら、そんなこと気にもならなかったはずだ。

でも、そのときの俺は、なぜか胸の奥がちくっとした。

当たるとか外れるとか、そういう受験の話じゃない。

この学校には、何か妙な空気があった。

次の瞬間、俺はそれをもっとはっきり思い知ることになった。
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