零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――

第一章「変な入学試験」

最初に変だったのは、筆記試験の問題用紙だった。

一枚目は普通だった。計算、漢字、ことわざ、短い文章題。しかし、二枚目をめくった瞬間、違和感を感じた。

問七 待合室の椅子は何脚あったか。
問八 案内係の男性のネクタイ留めの形として正しいものを選べ。
問九 初対面の相手に「今日は冷えますね」と話しかけられたとき、相手の警戒を解きつつ会話を続ける返答として最も適切なものを選べ。
問十 A、B、Cの証言から、嘘をついている人物を特定せよ。

「いや、なんの試験だよ」

つい口から漏れたら、教壇の前に立っていた試験官がぴくりともせずに言った。

「独り言も採点対象です」

「こわ……」

今度はちゃんと小声にした。

そのあとも問題は妙だった。文章の内容を要約しろと思ったら、最後に「語り手が隠している本音を一つ書け」とある。算数かと思ったら「見張り役が一人だけ必要なとき、もっとも目立たない立ち位置を選べ」とか出てくる。国語でも算数でも社会でもなくて、なんというか、人の見方とか会話の仕方とか、そういうのが混ざっていた。

俺は問題用紙を見ながら、朝、母さんに言われたことを思い出していた。

変なことがあっても、自分の目で見なさい。

いや、変すぎるだろ。
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