零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――
「うわっ!」

先頭にいた白鷺が中へ転がりこみ、その背中に俺が顔から突っこんだ。火村の集音筒はばねみたいに跳ねて、ぺちんと九条の肩を打った。大河内は俺だけの襟をつかんで止めたけど、全員は救えなかった。

「痛っ」

「狭い狭い!」

「静かにしろ!」

「もう静かじゃないだろ!」

顔を上げると、秋月先輩が扉の向こうに立っていた。

机の上には書類箱と、開いたノートが置かれている。先輩は俺たち五人を見下ろして、少しだけ困ったみたいに笑った。

「……五人がかりで盗み聞きすると、だいぶ混むね」

誰もすぐには返せなかった。

いちばん先に立ち直ったのは白鷺だった。

「これは、その、転倒訓練で」

「扉の前で?」

「臨機応変型の」

「苦しいなあ」

秋月先輩はあっさり言って、扉をもう少し開けた。

「入る?廊下のほうが目立つよ」

結局、俺たちは全員その部屋に入った。
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