零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――
そして最後の検査で、俺はようやくはっきり思った。

これはもう、普通の学校の入試じゃない。

案内された先は、小さな屋内射撃場だった。

ずらりと並んだ訓練用の銃、奥の標的、仕切りガラスの向こうに立つ試験官たち。猫っ毛のやつが口を開けたまま固まっていた。

「受験会場に銃ある!?」

「模擬射撃です。安全装置付きの訓練銃を使用します」

試験官は当たり前みたいに言った。

当たり前じゃないだろ。

前の受験生が何人か撃った。的は丸い紙だけじゃなく、小さな金属板や、横に動く標的まである。みんなそこそこ当てていたけど、全部ではなかった。外すたびに試験官が淡々と何かを書いていく。

「受験番号三七番」

呼ばれて前に出ると、訓練銃を渡された。射的屋の銃よりずっと重い。でも、握った瞬間に、重心がどこにあるかはなんとなくわかった。

「射撃経験は?」

「家が射的屋なので、似たようなのなら」

「遊戯用とは違います」

「わかってます」

深呼吸して、構えた。

やることは同じだった。的を見る。ぶれを消す。落ちる線を読む。

一枚目。二枚目。三枚目。

引き金を絞るたび、標的が小気味よく倒れた。

固定標的が終わって、今度は横に滑る小さな板が出てきた。少しだけ速い。でも、景品棚の端でぐらつくキーホルダーに比べたら、むしろ素直なくらいだった。

ぱん、ぱん、ぱん。

最後の一枚まで落ちた瞬間、後ろで空気がざわついた。

「……全部命中です」

試験官の声に、もう一人がすぐ返した。

「移動標的もか」

「はい」

さらに別の試験官が低くつぶやいた。

「百発百中だな」

俺は思わず振り向いた。ガラスの向こうで、さっきまで表情の薄かった大人たちが、明らかにざわついていた。右の端の人なんて、さっきから何枚目かわからない紙をめくっている。

「追加課題」

そう言われて、さらに小さい標的が一枚だけ出された。嫌な予感はしたけど、もうここまで来ると変に開き直っていた。

撃った。

落ちた。

「……記録しておいてください」

試験官たちの声が、今度は少しだけ低くなった。

「どこで習いましたか」

「だから、温泉街の射的屋です」

また妙な沈黙が落ちた。

なんでだよ。射的屋がそんなに珍しいのか。
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