秘書ですがエリート社長に溺愛されています
「そのままの意味だ」

 会長の声は冷静だった。

「お前は三年も秘書としてそばに置いていたんだろう」

「それなのに、何もできない」

「だったら他の男に取られても文句は言えない」

 玲司の拳がゆっくり握られる。

「……父さん」

 低い声。

 だが会長は続ける。

「もし本気で水瀬さんを欲しいのなら」

 少し間を置く。

「見合いを壊せばいいだろう」

 その言葉で、社長室は完全に静まり返った。

 玲司は何も言わない。

 ただ、受話器を強く握っている。

 やがて短く言った。

「……分かりました」

 そして電話を切る。

 静かな音。

 玲司はしばらく動かなかった。

 背中を向けたまま、窓の外を見ている。
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