人形姫と秘密のお役目 -1-
 静寂が落ちる。

 やがて煙がゆっくりと晴れていくと、妖魔の歪んだ笑い声が響いた。


『……ははっ、やったぞ!夜桜の者を、殺してやった!』


 その背後で、私は音もなく立っている。


「――滅」


 静かに告げながら札を背に貼り付けると、霊力が弾け、妖魔の動きがぴたりと止まった。

 ゆっくりと目を開いたその瞬間、曖昧だった世界が一気に輪郭を取り戻し、距離も位置もすべてが明確に結ばれていく。

 自身の瞳が、怪しく赤く光り、すべてがはっきりと“視える”。

 腕の中の人形に意識を向けると音もなく動き出し、私と同じように札を指に挟んで動きをなぞる。

 妖魔が暴れるように腕を振るうが、その軌道もすべて視えている。

 横へわずかに身体をずらしてかわし、そのまますれ違いざまに札を打ち込み、同時に人形が背後へ回り込んでさらに一枚を重ねる。

 霊力が重なり合うたびに妖魔の動きは鈍くなっていき、逃がさないとばかりに踏み込んで距離を詰める。
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