人形姫と秘密のお役目 -1-
 人形と完全に呼吸を合わせ、一つ、二つ、三つと札を重ねていき、最後の一枚を中心へ叩き込む。


「……ふう」


 一拍の静寂ののち、妖魔は弾けるように崩れ、黒い塊は霧のように散っていった。

 残った重たい空気も、やがてゆっくりと消えていく。

 周囲から駆け寄る気配。


「次期当主さまが助けてくださったぞ!」

「ありがとうございます、澪様!」


 口々に上がる声を受けながら、私は開いたままの目でその場を見渡す。

 誰がどこにいるのかも、はっきりと見えている


「……どういたしまして」


 そう答えたところで、ふと視界が歪む。

 体の奥が少しだけ重く、足元がわずかに揺れる。

 でも、それだけだった。


(気のせい……?)


 そう思った、そのとき。

 足元に違和感が走り、ひやりとした感触が這い上がってくる。


「……あ」


 思わず視線を落とすと、黒い手が私の足を掴んでいた。
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