人形姫と秘密のお役目 -1-
 柔らかな布の感触は、いつもと変わらない。

 それを確かめるように、指先に少しだけ力を込める。


「澪? ちゃんと聞いてる?」

「……聞いてる」


 短く返して、ゆっくりと立ち上がる。

 次の時間は体育らしい。

 よく分からないままでも、とりあえず行けば何とかなる。

 そう思いながら、人の流れに混ざるようにして教室を出た。

 体育館に入ると、ひんやりとした空気が肌に触れる。

 既に何人かは集まっていて、それぞれラケットを手に取りながら準備をしている。

 床に反射する光と、かすかな足音が重なり合う中、私は周囲を一度だけ見渡した。

 とりあえず近くにあったラケットを手に取るが、思っていたよりも軽い。うっかり吹っ飛びそうだ。


「澪ちゃん、ちょっと貸して」


 隣から伸びてきた手に、ラケットをそのまま渡す。


「持ち方、こうだよ。ここ握って……」


 つむぎが自然な距離で隣に立ち、手の位置を軽く整える。


「……こう?」

「うん、そんな感じ。あとは振るだけ」
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