人形姫と秘密のお役目 -1-
 ひそひそとした声。抑えきれないざわつきが、周囲に広がっていく。

 さっきまで握っていたはずのラケットの感覚はなく、周りの反応と先ほどの音を聞くと、床に突き刺さっているのだろう。


(……やっちゃった。当主様に怒られるかも)


 ほんのわずかに、思考が止まる。

 力の加減を誤った。

 それだけのはずなのに、想定よりもずっと派手な結果になっている。


「……貸して」


 近くにいた生徒に手を差し出す。

 一瞬だけ戸惑う気配。

 それでも、すぐに別のラケットが差し出された。


「ありがと」


 短く受け取り、今度は意識して握り直す。

 さっきよりも、慎重に。

 そのときだった。

 ふと、呼吸が引っかかる。


(……?)


 違和感。

 視線を上げるより先に、感覚が先に反応する。

 空気が重い。体育館の広がりとは違う、どこか(よど)んだ感触。底のほうに沈むような、鈍い圧。じわりとまとわりつく、不快な重さ。
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