人形姫と秘密のお役目 -1-
(……なに、これ)


 息を吸うたびに、わずかに残る。

 長くいれば、確実に影響が出る類のもの。

 無意識に、眉がわずかに寄る。


「ちょ、ちょっとあんた! 危ないじゃない、ラケットは投げるものじゃないのよ!?」


 その声で、意識が引き戻される。

 顔を上げ、コートの向こう側にいる相手は、こわばっていた顔をいつもの強気な表情に戻っていた。

 この空気の異変に、何も気づいていないように、ただ、こちらを見ている。

 だが、私はそんなことに気にする余裕がなく、胸の奥が、ざわついていた。

 言葉にならない違和感。

 けれど、無視していい(たぐい)のものじゃないと、感覚が告げている。


(……このままは、まずい)


 根拠はないがこういうときの“勘”は、外れたことがない。

 じわりと、嫌な予感が広がる。

 放っておけば、取り返しのつかないことになる。

 そんな確信に近いもの。


(……視よう。そのために、人形を預けたんだから)
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