人形姫と秘密のお役目 -1-
淀んだ空気と祓いきれない“もや”
 空間のあちこちに、黒く、もやのようなものが漂っている。

 薄く広がるものもあれば、濃く滞留(たいりゅう)している場所もある。

 濃いところは、向こう側が見えない。目を凝らしてようやく、輪郭が揺らいでいるのが分かる程度。

 まるで、空気そのものが濁っているみたいに。

 一度認識してしまえば、もう見落とすことはできない。視界の端から端まで、それは確実に広がっていた。


(……こんなの、初めて)


 息を吸うたびに、喉の奥がわずかに重くなる。

 肌にまとわりつくような、不快な感触。

 見えるからこそ、はっきりと分かる。

 これは、“ただの空気”じゃない。

 ふと、脳裏に浮かぶ。


 ――この前、対峙した“あれ”。


 あのときも、似たような淀みはあった。


(……けれど、全然違う。今の状況と)


 あのときは、原因がはっきりしていた。

 中心となる存在がいて、そこから広がっていたから、単純に祓ってしまえば終わった。
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