人形姫と秘密のお役目 -1-
 濃い場所だけを選び取るように、力加減を調整しながらシャトルを打ち返す。

 そのたびに、空間の一部がわずかに軽くなる感覚があるのに、すぐに別の場所から補われるように、もやは形を保ったまま広がり続けていた。


(……終わらない)


 むしろ、こちらの動きに反応するように、濃い部分がわずかに集まり始めている。

 視界の端で揺れていた黒が、さっきよりも密度を増しているのが分かる。

 じわり、と空気の圧が強くなる。

 呼吸がわずかに重くなる。

 それでも、手は止めない。

 濃いところを、優先して削る。

 勝敗はもう、頭から外れていた。

 点がどうなっているのかも、相手が何を狙っているのかも、意識の外に追いやられている。

 ただ、打つたびに削るのを繰り返す。
< 46 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop