人形姫と秘密のお役目 -1-
 結果として、シャトルは何度も狙いを外れ、ラインを越え、ネットにかかり、明らかに試合としては成立していない返球が続いていく。


「ちょっと、ちゃんとやる気あるの?」


 苛立ちを含んだ声が飛んでくるが、それに意識を向ける余裕はない。

 こちら側に来たシャトルを濃い部分を狙ってひたすら打つ。

 それでも、もやは消えるどころか空間全体としての濃さが、わずかに増しているようにすら感じられた。


(……まずい)


 確信だけが、残る。

 止めなければいけないのに、この場では足りない。

 圧倒的に。

 その間にも試合は進み、点差は開いていく。

 気づいたときには、取り返しのつかないところまで。

 最後の一打も、狙いから外れたままコートの外へと落ちた。


 ──ビィー!


 3分を知らせるタイマーの音が広い体育館に鳴り響いた。

 試合終了の合図だ。

 小さく響いた着地音のあと、わずかな間を置いて、周囲のざわめきが一気に戻ってくる。
< 47 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop