人形姫と秘密のお役目 -1-
 勝敗がついたことで、張り詰めていた空気が緩んだはずなのに、胸の奥に残る重さだけは消えなかった。

 ラケットを持つ手から、ゆっくりと力を抜く。

 そのとき、わずかに軋むような感触が指先に残った。

 やっぱり、長くはもたない。

 分かっていたことを、静かに確認する。

 けれど今は、それよりも優先するものがある。

 コートの向こうでは、相手の女子が軽く息を吐きながらラケットを肩に担ぎ、こちらを見ていた。


「……なんか、拍子抜けなんだけど。最初のアレでちょっとはできるのかと思ったのに」


 呆れたような声。

 けれど、その言葉に反応する余裕はない。

 視界の端では、まだ黒いもやがゆらゆらと揺れている。

 祓っても祓っても、消える気配はなかった。


「澪ちゃん〜!」


 弾けるような声とともに、つむぎが駆け寄ってくる。


「いやいやいや、強すぎない!?」


 距離を詰めるなり、勢いのまま言葉を重ねる。
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