人形姫と秘密のお役目 -1-
「ていうかなに? あのラケット!?」


 視線の先には、未だに床に突き刺さったままのラケット。


「普通刺さらないよね!?」

「……そう?」

「そうだよ!?」


 間髪入れずに返されるツッコミ。

 周囲からも、まだざわついた声が上がっている。


「澪、運動神経おかしくない?」

「……普通だと思うけど」

「普通じゃないって!」


 言い切ったそのとき。


「つむぎー! ごめん、こっち入って!」


 少し離れたコートから、声が飛んでくる。

 つむぎがそちらへ振り向く。

 ほんの一瞬だけ迷ったあと、苦笑いを浮かべた。


「ごめん、呼ばれちゃった。あとでちゃんと聞かせてね!」

「……うん」


 短く頷くと、つむぎは軽く手を振ってそのまま小走りで離れていく。

 明るい声と足音が遠ざかっていく。

 それを見送りながら、わずかに息を吐いたそのとき、誰かがこちらに向かってくる気配。
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