人形姫と秘密のお役目 -1-
 置き去りにされた紙に描かれている線は、意味のない落書きじゃない。

 断片だ。壊れた術式の一部の。

 しかもそれは一度きりじゃなかった。

 別の日、別の生徒が、また同じように何かに突き動かされるように紙へと線を刻む。

 形はわずかに違うが、同じような術式だ。

 ばらばらの破片みたいでいて、確かにどこかへ繋がろうとしている。

 俺は誰にも気づかれない場所で、それらを回収して、術式を燃やして効果を焼き消す「封術焼却」を施す。

 霊力を指先に落とすように通して、紙に触れた瞬間だけ、そこにある異質さだけを剥ぎ取る。

 燃えるでもなく、裂けるでもなく、ただ“悪いものだけが抜け落ちる”。

 残るのは、ただの紙片だ。

 それを破いて処理しながら、内容だけを手帳へと写していく。

 理由は分からないが、陰陽師としての勘がそうしろと言っている。

 それに最近わかってきたが、これは相手を呪い殺す悪意のある術式だとわかった。
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