人形姫と秘密のお役目 -1-
 いつも大切そうに抱えている、垂れ耳のうさぎの人形。

 目を閉じているのに、周囲の気配を正確に捉えているような仕草。

 そして時折、ほんの一瞬だけ見せる、何かを探るような静かな表情。

 見れば見るほど、不思議だなと思う。


 ──どこかで会ったような気がする。


 その感覚は相変わらず曖昧なままで、掴みかけた瞬間に指の隙間から零れていくみたいに、答えだけが霧の向こうへ逃げていく。

 暗闇の中で、一瞬だけ見えた赤い瞳。

 風に揺れた、淡いクリーム色の髪。

 必死に伸ばした手の先で、音もなく現れて、何も告げずに消えていった小さな背中。

 あれは幼い頃の記憶だ。

 顔なんて、まともに見えていない。

 それなのに、ときどき脳裏をよぎる。

 あのとき助けてくれた“誰か”の残像が、目の前の少女とどこか重なって見えてしまう。

 もちろん、ただの思い違いかもしれない。

 こんな広い世界で、そんな都合のいい偶然があるとは思えない。
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