人形姫と秘密のお役目 -1-
 だけど、見えないはずのものを見て、感じないはずのものを感じる。

 そういう側の人間として生きてきた俺の感覚が、小さく囁いている。

 それと同時にあの子がこの学園に来てから、例の“紙に術式を書く現象”も、むしろ頻度を増していた。

 まるで、少女を呪い殺そうとしているように。

 俺は相変わらず、その紙を人知れず回収しては「封術焼却」を施し、内容だけを手帳へ書き写している。

 霊力を通した瞬間、紙にまとわりついた悪いものだけが抜け落ちる。

 残るのは、ただの紙片。

 けれど、そこに刻まれていた線だけは、確かに意味を持っている。

 断片はいくら集めても完成しない。

 足りない何かがある。

 中心となる核のようなものが、ぽっかりと抜け落ちている。

 まるで、何かが“揃う瞬間”を待っているみたいに。

 そんなことを考えていた、ある日のことだった。

 授業で訪れた体育館には、生徒たちの賑やかな声が響いていた。
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