人形姫と秘密のお役目 -1-
 種目はバドミントン。

 軽快な打球音と、楽しげな笑い声があちこちで交わされる。

 いつもと変わらない、中学校の体育の時間。

 その中で、いつものように朝比奈が夜桜のそばにいた。


「澪ちゃん、一緒にやろっか」


 明るい声とともにラケットを掲げる朝比奈に、夜桜は腕の中のうさぎの人形を抱き直しながら、小さく頷く。


「うん」


 短い返事。

 けれど、それだけで朝比奈は嬉しそうに笑う。

 そんな二人のやり取りを、俺は少し離れた場所から何となく見ていた。

 朝比奈は相変わらず距離の詰め方が上手い。

 相手が無口だろうが、愛想がなかろうが、お構いなしに隣へ行く。

 けれど押しつけがましさはなく、不思議と相手の呼吸を乱さない。

 夜桜の隣に朝比奈がいる光景も、もうこの数日ですっかり見慣れたものになっていた。

 そのときだった。


「ねぇ、夜桜さん」


 呼び止める声に、自然とそちらへ視線が向く。

 クラスの女子がひとり、ラケットを持ったまま立っていた。
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