人形姫と秘密のお役目 -1-
 空気がわずかに張り詰める中、私は静かに立ち上がり、人形を抱き寄せた。


「……すぐ準備して行く。外で待ってて」

「御意」


 蒼真は短く答え、一礼をすると、素早く部屋から出ていった。

 御札を数枚持ち、人形を抱えて外へ出ると、夜の空気が肌に触れた。

 ひんやりとしているのに、どこか重い。
 息を吸うたびに、胸の奥にざらついた感覚が残る。


(……空気が重く、(けが)れている)


 私は人形を抱き直し、歩き出す。

 隣には蒼真。
 少し前を行きながら、周囲を警戒するように視線を巡らせている。


「場所は?」

「東の林の先です。桜丘学園から、数キロほど」

「そう」


 短く返しながら、私は足を速めた。

 夜道は暗い。
 けれど、人形越しに映る世界は、それ以上に曖昧だ。

 輪郭は滲み、距離はわずかにずれる。
 足元を確かめるように、一歩ずつ進む。


「……そうや」

「蒼真です」
< 6 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop