人形姫と秘密のお役目 -1-
 間を置かず、訂正が入る。


「……蒼真。あとどれくらい」

「もう近いです。ですが――」


 蒼真の声が、わずかに低くなる。


「報告によると、かなり強いらしいです。そこら辺のものと比べものにならないくらいかと」


 その言葉に、私は小さく頷いた。


「……分かった」


 それ以上は言わない。

 言葉よりも先に、空気がそれを教えてくれている。

 進むにつれて、重さが増していく。

 音が、消えていく。

 虫の声も、風の音も、何もかもが遠ざかり、やがて、完全な静寂に包まれた。

 そこで、足を止める。


「……ここ?」

「はい」


 蒼真も立ち止まり、前方を睨むように見据えた。

 その先。

 地面には、倒れた人影がいくつも転がっている。

 陰陽師たちだ。

 衣は乱れ、札は散り、誰一人として動いていない。


 そして──その中心に、妖魔はいた。

 黒く、歪んでいて形を持たないまま、ゆらりと揺れている。

 人形越しでは、はっきりとは捉えられない。
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