人形姫と秘密のお役目 -1-
 けれど、そこらの妖魔とは比べ物にならないほど強い。

 妖魔の向こう側。

 ひとり、まだ立っている影があった。

 息を荒げながら、それでも必死に構えている。

 次の瞬間、妖魔が腕のようなものを振り上げた。

 狙いは、その少年。


「蒼真。位置を」

「はい! 正面から距離三歩、左から来ます!」


 蒼真の声を頼りに、私は静かに足を踏み出す。

 空気が重く、息を吸うたびに胸の奥がざらつくような感覚が残るが、それでもまだ“視えていない”この状況では、人形越しの曖昧な視界と蒼真の指示だけが頼りだった。

 私はあの少年との間に割り込むと、懐から札を一枚取り出して地へと放ち、小さく呟く。


「――展開」


 札が淡く光り、薄い膜のような結界が瞬時に広がった直後、妖魔の腕が叩きつけられ、鈍い衝撃とともに結界に大きな亀裂が走った。

 それでも、内側にいる少年への直撃だけは防ぎきる。


「……今のうちに、逃げて」
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