アダムを噛んで、熱を吸う
翌週。
掲示板の前には、逃げ場のない熱気が澱んでいた。
張り出された順位表。その瞬間、周囲の空気が一気にざわめき立つ。
私は人の隙間を縫うように、最前列へ出た。
探す。自分の名前を。

あった。
3位。
一瞬、肺の中の空気が軽くなる。
けれど、その視線のすぐ上。
2位。速水聖。
1位には、また別の名前が刻まれている。

無意識に奥歯を噛み締める。
悔しい。速水とはわずか二点。その二点の向こう側に、彼がいる。

「うわ、また僅差じゃん」

背後から結衣の無邪気な声が降る。

「ほんとに漫画みたい。アンニュイ秀才カップル、確定だね」
「やめてってば」

笑う。いつもの角度で。

けれど視線だけは、紙に印字された冷酷な数字から離せない。
ふと気配を感じて顔を向けると、少し離れた位置に速水が立っていた。
騒がず、誇らず。ただ、一瞬だけこちらを見る。

目が合う。光を吸い込むような、深い黒。
勝ったと奢る色も、負けたと嘆く色もない。
ただ、「まだ、俺が上にいる」という事実だけを無機質に突きつけてくる目。
私は、視線を逸らさなかった。
数秒。どちらからともなく、同時に背を向けた。
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