『薫櫻日和 ―私たちの春夏秋冬―』
第7話『雨の日の放課後、秘密の相談』
放課後、空は灰色の雲に覆われ、しとしとと雨が降っていた。教室の窓に打ち付ける雨粒を見ながら、私は少し憂鬱な気持ちになる。
「美紀、傘ある?」
結が声をかけてくる。彼女の手には二つ目の傘が握られていた。
「うん…でも一人じゃ歩きにくいな」
「じゃあ一緒に帰ろうよ!」
結の笑顔に自然と心が軽くなる。
校舎を出ると、雨の匂いと土の香りが混ざり、放課後ならではの独特な空気が広がる。二人で傘を差しながら歩く。
「ねぇ、美紀…ちょっと相談があるんだけど」
結が少し声を落として言う。
「相談…?」
「うん…実は、私の家族のことでちょっと困ってて…」
彼女の表情が一気に真剣になる。
「そっか…話してくれていいよ」
私も少し緊張しながら応じる。
「ありがとう…うん、実は最近、お母さんが仕事で忙しくて、家のことを全部私に任せることが多くなっちゃったの。でも、学校のことも大事だし、部活も楽しいし…どうしたらいいかわからなくて」
結の声は少し震えている。
「うーん…それは大変だね」
私は雨粒を避けながら歩きつつ考える。
「でも結、無理しなくていいんだよ。私もできることあったら手伝うから」
思わず手を握る。結は驚いた顔をして、でもすぐに安心したように笑う。
「美紀…ありがとう、やっぱりあなたがいてくれてよかった」
「うん、友達だもん」
雨の中、少し歩くと近くの小さな公園に差し掛かる。ベンチに座りながら、二人で濡れた傘を休める。
「ねぇ、美紀…実はもう一つ相談があるんだけど…」
結が少し顔を赤くする。
「え…なに?」
「その…私…翔先輩のこと、ちょっと好きかもって思っちゃって…」
彼女の告白に、私は一瞬言葉を失う。
「そっか…でも結、それは悪いことじゃないよ」
「うん、でも…どうしたらいいかわからなくて…」
結は俯きながら傘の先を弄る。
「私もさ…少し前からドキドキすることあったけど、こうやって話せてよかった」
「うん…美紀と話すと安心する」
雨音の中で二人の距離が少しだけ縮まる。友情と淡い恋心が混ざる、秘密の時間だった。
帰り道、雨は小降りになり、夕陽が雲の間から顔を出す。
「美紀、明日からも頑張ろうね」
「うん、結も一緒にね」
桜並木を抜けると、足元の水たまりに二人の笑顔が映る。雨の日の放課後も、友情の絆と心の支えを強く感じる瞬間だった――。