『薫櫻日和 ―私たちの春夏秋冬―』
第8話『放課後の秘密の特訓と初ライブ前夜』
放課後の校舎は、文化祭の喧騒が少し落ち着いた空気に包まれていた。軽音部の部室には、まだ片付けきれない楽器や譜面が散らばっている。
「美紀、ちょっと来て!」
結が部室の奥から手を振る。
「何?」
「秘密の特訓、始めるよ!」
結は目を輝かせ、なぜかニヤリと笑っている。
「秘密の特訓…?」
少し不安になる私。
「うん、明日の初ライブに向けてね。私たち、もっと完璧にしたいんだ!」
結の熱意に、思わず頷く。
部室の真ん中に譜面台を置き、ギターを構える。翔先輩も隣でアドバイスしてくれる。
「美紀、Cコードの押さえ方、ちょっと指が曲がってるな」
「え…こう…?」
「そうそう、指先をもう少し立てて弦に触れないように」
結も真剣な表情で隣で練習している。
「美紀、今度はリズムも合わせよう!」
「う、うん…!」
何度も演奏を繰り返すうちに、少しずつ音が揃い、リズムも乗ってきた。
「すごい、二人とも上達早いな!」
翔先輩も嬉しそうに微笑む。
練習の合間、結がふと真剣な顔で私に近づく。
「美紀…ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど…」
「うん、何?」
「明日のライブ、私…美紀と一緒にステージに立つの、すごく楽しみだけど…ちょっと緊張してるんだ」
「私も…同じ気持ちだよ」
心臓が少し早くなる。結の目を見つめると、自然と笑顔になった。
「じゃあ…一緒に頑張ろうね、美紀!」
「うん、一緒に!」
夕方、部室の窓から夕陽が差し込む。金色の光の中、二人で最後の確認をする。
「美紀、明日の曲順、もう一度確認しよう」
「はい…じゃあ、最初は『キラキラ☆青春』から」
「うん、次は私のソロパート…その後、美紀のギターソロ!」
「え…私、緊張する…」
「大丈夫!私も一緒だし、翔先輩もいるよ」
結の手が自然と私の肩に触れる。ドキドキが胸に広がる。
夜、帰宅の時間になり、二人で傘を差しながら校門を出る。
「明日、絶対成功させようね、美紀!」
「うん、楽しもう!」
雨上がりの空に、星がちらほらと見え始める。
友情と少しの恋心、そしてステージへの期待――すべてが入り混じった胸の高鳴りを抱えながら、明日のライブに向けて心を整える美紀だった。