『薫櫻日和 ―私たちの春夏秋冬―』
第9話『初ライブ当日!友情と恋の大混乱』
朝、校舎に一歩足を踏み入れると、すでに教室は文化祭の準備で大忙し。廊下には演劇や展示の小道具が散乱し、笑い声と緊張感が混ざる独特の空気が漂っていた。
「美紀、準備できた?」
結が駆け寄り、手に譜面と楽器ケースを抱えている。
「うん、でもちょっと緊張する…」
「大丈夫!私たち、昨日の特訓でバッチリだよ!」
結の自信に満ちた笑顔に、少し勇気をもらう。
軽音部のステージは校庭の中央。観客席には友達や先輩、保護者の姿も見える。
「美紀、落ち着いて!」
翔先輩がそっと肩を叩く。
「うん…落ち着かないけど、頑張る…!」
ステージ袖で待機していると、結が私の手をぎゅっと握る。
「美紀、一緒に最高のステージにしよう!」
「うん、一緒に…!」
演奏開始の合図が出ると、観客の拍手が一気に響く。
「せーの!」
私たちは緊張を力に変えて、ギターとキーボードを弾き始めた。
「美紀、リズム大丈夫?」
「うん、結に合わせる!」
二人の息がぴったり重なり、曲がスムーズに進む。
途中、結のソロパート。観客の視線を一身に受けて少し固まる彼女を、私は心の中で応援する。
「結、大丈夫!思いっきり楽しんで!」
彼女は小さくうなずき、笑顔で演奏を続ける。
演奏が終盤に差し掛かると、トラブル発生。
キーボードの音が突然途切れ、私たちは一瞬焦る。
「えっ…何これ!?」
「大丈夫、美紀、落ち着いて!」
結が隣で叫ぶ。
私は深呼吸して、手元を確認する。幸いすぐに復旧し、二人で最後のサビを全力で演奏。観客から大きな拍手と歓声が巻き起こった。
「やった…成功だね!」
「うん…美紀、すごいよ!」
結と抱き合う。友情の絆が、この瞬間さらに強く感じられた。
演奏後、翔先輩が私の肩に手を置く。
「美紀、よく頑張ったな」
「ありがとうございます…!」
「実は…美紀に言いたいことがあって」
少し赤くなる彼の頬。
「えっ…なに?」
「俺、美紀のこと…やっぱり特別に思ってるんだ」
「そっ…私も…!」
思わず笑顔で返す。胸がドキドキと跳ねる。
結も横で微笑んでくれる。友情と恋の両方が混ざった、この不思議で幸せな気持ち――。
放課後、校庭で片付けをしながら結がつぶやく。
「美紀、今日の思い出、絶対忘れないね」
「うん…私も!」
桜の花びらが夕陽に舞う中、友情も恋も青春も、すべてが美紀の胸に深く刻まれていった。