あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
夕方、コピー室で資料を揃えていると、後ろから声がした。

「これ、お持ちします」

振り向くと、恒一が私の持っていた重い資料束を受け取っていた。

「自分で持てるわ」

「もちろんでしょうけど」

さらりと返されて、私は眉を上げる。

「では、持たせてください。部長に無理をさせると、周りが怒られそうです」

「なにそれ」

思わず笑うと、彼も少し目を細めた。

その瞬間、私は気づいた。

彼は私を“部長”として丁重に扱っているだけではない。

そこには、もっと自然な、もっと厄介なものが混じっている。

女だからと下に見る軽さでもなく、年上だからと遠慮する堅さでもなく、ただ一人の女性として、当たり前みたいに接してくるのだ。

そんな男は、いつ以来だろう。
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