あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
さらりと返されて、私は思わず口元を緩める。

またある日は、会議が長引いて昼食を取る暇もなかった私に、彼が小さな紙袋を差し出した。

「これ、何?」

「サンドイッチです。昼、食べてないでしょう」

「……見てたの?」

「見ていました」

「監視?」

「気遣いです」

その言い方があまりにも自然で、私は返す言葉を失った。

「別に、これくらい平気よ」

「部長は“平気”を言いすぎです」

「そう?」

「ええ。もう少し周りを頼ってください」

そのときの彼の目が、妙に優しかった。

仕事上の配慮、部下としての気遣い、そう言ってしまえばそれまでなのに。

その一瞬だけは、私が“高瀬部長”ではなく。

ただの一人の女として見られているような気がして、胸が小さく揺れた。
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