あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
その日、取引先での打ち合わせを終えた帰り、私と恒一はビルのエレベーターに乗り込んだ。

夕方のフロアは静かで、ようやく長い緊張から解放された私は、小さく息を吐いた。

「今日は助かったわ」

私が言うと、恒一は隣で穏やかに笑った。

「部長がいたから、うまくまとまったんです」

その直後だった。

ガクン、と大きな揺れがして、エレベーターが止まった。

「……え?」

思わず壁に手をつく。

恒一はすぐに操作盤を確認し、非常ボタンを押した。

「大丈夫です。落ち着いてください」

その声は低く、驚くほど冷静だった。

私は頷いたものの、心臓が嫌な速さで打ち始める。

最初は、すぐ動くだろうと思っていた。

こういうのは数分で復旧するものだと、自分に言い聞かせていた。

けれど、五分経っても、十分経っても、扉は閉じたままだった。
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