あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
「今日は早いのね」

「はい。産婦人科に行ってから帰ろうと思って」

「ああ……そうだったわね。もう安定期?」

「はい。つわりも少し落ち着いてきました」

「それはよかった。無理しないで」

「ありがとうございます。あ、来月から引き継ぎを本格的にしたいので、また相談させてください」

「ええ、もちろん」

にこにことお腹をさすりながら頭を下げる沙紀を見送って、私はしばらくその場に立ち尽くした。

妊娠、か。

前なら、「おめでとう」「体を大事にして」で終わっていた。

実際、今だって祝福している。

部下が幸せそうなのは、嬉しい。嬉しいはずなのに――。

「……何やってるの、私」

小さく呟いて、私は会議室へ向かった。
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