あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
昼休み。休憩スペースの前を通ったとき、女性社員たちの明るい声が耳に入る。

「えー、かわいい! これ寝顔ですか?」

「そうなの。昨日やっと笑ったの」

「いいなあ、癒やされる……」

赤ちゃんの写真。そんな言葉が聞こえてきただけで、私は足を止めそうになる。

けれどすぐに歩き出した。

別に、羨ましいわけじゃない。

私は私で、手に入れてきたものがある。

結婚より仕事を選んできたのも、自分だ。

誰に強制されたわけでもない。

そう、分かっている。分かっているのに。

その日の夜、ようやく帰宅して、玄関でヒールを脱いだ瞬間、ふっと力が抜けた。

「はぁ……疲れた」

誰もいない部屋。静かなリビング。

ジャケットを脱いでソファに座ると、部屋が妙に広く感じる。

冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、一口飲む。

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