あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
そう言って、恒一は扉の隙間に指をかけた。

無理にこじ開けるのではなく、わずかでも空気が通るように確かめている。

筋の浮いた手首、シャツ越しに見える腕の力。

普段は品のいい笑みを浮かべている男が、今は黙って扉と向き合っている。

その姿が、ひどく男らしく見えた。

やがて、扉がほんの少しだけ開いた。

細い隙間から、外の空気がすっと流れ込んでくる。

「……あ」

私は思わず息を吸い込んだ。

恒一が振り返る。

「大丈夫です。俺がいますから」

次の瞬間、彼は私の背後にしゃがみ込み、そっと包み込むように抱きしめた。

広い胸板が背中に触れ、腕が私の体を守るように回る。

ジャケット越しでも分かる体温に、張り詰めていた神経がほどけていく。

「怖かったですね」
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