あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
「では、駅まで」

そのまましばらく歩いたところで、私は足を止めた。

恒一が不思議そうに振り返る。

「どうしました?」

私は少しだけ笑った。

たぶん、自分でも分かるくらい寂しそうな笑い方だった。

「……ありがとう」

「え?」

「今日、付き合ってくれて」

「いえ」

「今日ね、私の誕生日だったの」

言ってしまってから、少しだけ後悔した。

何を言っているのだろう、私は。祝ってほしかったみたいじゃない。惨めだ。

けれど恒一は、目を見開いて本気で驚いたあと、すぐに眉を寄せた。

「なんでもっと早く言わなかったんですか」

「別に、大したことじゃないし」

「大したことですよ」

その声が思ったより強くて、私は言葉を失った。
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