あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
恒一はあたりを見回した。

通りの向こう、閉店間際の店の灯りを確かめるように、落ち着きなく視線を動かす。

「橘さん?」

「少し待っていてください」

「え、どうしたの?」

そう言う間もなく、彼は早足で通りの向こうへ向かった。

視線の先を追うと、そこにはまだ明かりのついたバッグショップがあった。

「ちょっと……」

止める間もなかった。

ガラス越しに見える恒一は、店員と何か短く言葉を交わし、棚を見渡している。

私は店の外で立ち尽くしたまま、自分の鼓動が少しずつ速くなるのを感じていた。

やがて数分後、紙袋を手にした恒一が戻ってくる。

「お待たせしました」

「どうしたの、本当に」

「誕生日なのに、何もないまま帰すわけにはいきません」

「そんな、いいのに」

「よくありません」
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