あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
「だめなの、もう……」

気づけば、目の奥が熱くなっていた。

こんなふうに人前で涙を見せるなんて、いつ以来だろう。

慌てて顔を背けたのに、恒一は何も言わず、一歩近づいてきた。

「美弥さん」

初めて名前で呼ばれて、胸が大きく揺れる。

その声があまりにも優しくて、私はもう耐えられなかった。

「あなたが欲しい」

絞り出すみたいに言った。

「……どうしようもなく」

涙が一筋、頬を伝う。

恒一は驚いたように息をのみ、それからそっと指先で私の涙を拭った。

「そういうことは」

低く落ち着いた声だった。

「もっとお互いを知ってから、言うものじゃないですか」

その言い方は責めるでも拒むでもなく、むしろ私を大事にしようとしているのが分かって、余計につらくなる。

私はたまらず、彼の腕をつかんだ。
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