あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
「無理なの」

自分でも何を言っているのか分からなかった。

ただ、言わずにはいられなかった。

「たまらないの。あなたのその匂いが……声が、温度が」

言葉にするたび、羞恥で全身が震える。

けれど、もう止められない。

「ずっと冷静でいようと思ってたのに、できないの。あなたが近くにいると、全部おかしくなる」

恒一は黙って私を見ていた。

その視線は静かなのに、私の中の一番深いところまで見抜いてしまいそうだった。

やがて、彼はゆっくりと息を吐いた。

そして、確かめるように問いかける。

「……俺の子どもが欲しいの?」

その瞬間、時間が止まった気がした。

あまりにも真っ直ぐで、あまりにも核心だった。

ごまかせない。逃げられない。

私がずっと心の奥に押し込めていた本音を、彼は一言で掬い上げてしまった。
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