あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
年齢も立場も違う。

私は四十二歳の部長で、彼は三十五歳の部下。

昨夜のことを引きずって、仕事を壊すわけにはいかない。

そう言い聞かせながら出社したのに、恒一の態度はまるで変わらなかった。

――いや、変わらなかったどころか、むしろ以前より近かった。

「部長、この資料、先に私が確認しておきました」

午前中、私の机に書類を置きながら、恒一はいつも通り落ち着いた声で言う。

「ありがとう」

私も平静を装って返したけれど、彼が書類を差し出す指先を見るだけで、昨夜の記憶が脳裏をかすめてしまう。

昼過ぎ、会議を終えて席へ戻ると、デスクの隅に小さなカップが置かれていた。

私がよく飲む銘柄のカフェラテ。

振り返ると、恒一が少しだけ目を細める。
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