あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
まるで特別な意味なんてないみたいな口調なのに、十分すぎるほど特別だった。

「……毎晩そんなことしていたら、周りに何か言われるわよ」

「言わせておけばいいでしょう」

「私はよくないの」

「部長」

恒一は少しだけ身をかがめて、私の目をまっすぐ見た。

「この前の夜のことを、なかったことにしたいなら、それでも構いません」

低い声に、胸がひやりとする。

「でも俺は、なかったことになんてしません」

その言葉に、心臓が大きく跳ねた。

帰り道、夜風は冷たかったのに、彼と並んで歩く時間は不思議なくらい穏やかだった。

駅までの短い道のり。

仕事の話をして、どうでもいいことを少し話して、それだけなのに。

私の歩幅に合わせる彼の優しさが、昨夜よりずっと甘く胸に沁みる。
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