あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
「そんなに前から?」

「ええ。なのに、あなたは全然気づかない」

その言い方が少し拗ねたようで、私は思わず笑ってしまう。

「だって……分からなかったもの」

「分かるようにしたら、あなた逃げるでしょう」

「……否定できないわ」

そう返すと、恒一は私の髪をそっと耳にかけた。

指先が頬をなぞる。

その手つきがやさしくて、まるで壊れものに触れるみたいで、私はまた泣きたくなる。

「美弥」

名前を呼ばれる。

それだけで、体の奥まで甘く震えてしまう。

「俺、本当にあなたが好きです」

低く落ちる声が、静かな部屋にやわらかく響く。

「仕事をしているときの顔も、強がるところも、誰にも弱さを見せないところも。全部好きです」

私は唇を噛んだ。

まっすぐすぎる言葉に、胸がいっぱいになる。
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