あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
けれど今は、強がる意味なんてどこにもなかった。

恒一は少し目を見開いて、それからとても静かに微笑んだ。

「離れるわけないでしょう」

そのまま、私を抱き寄せる。

広い胸の中に包まれると、不思議なくらい安心した。

仕事も年齢も立場も、今は何もかもどうでもよくなる。

ただ、この人の腕の中が私の居場所なのだと思えた。

「もっと早く言えばよかった」

ぽつりと零すと、恒一が私の頭を撫でた。

「俺もですよ」

「嘘。あなたのほうが余裕ありそうだった」

「あるように見せてただけです」

「本当に?」

「本当です。あなたに触れたくてたまらないのに、平気なふりをしてただけです」

その告白がうれしくて、私は小さく笑った。

両片想いなんて、なんて遠回りだったのだろう。
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