あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
しばらく、私は息をするのも忘れてそれを見つめていた。

夢じゃないのだろうかと思った。

昨夜、恒一に抱きしめられて、あんなにも熱く、あんなにも深く愛されたことも。

私の心のいちばん柔らかい場所を、もう隠せないほどに暴かれてしまったことも。

でも指輪は確かにそこにあった。

冷たくない。彼の体温を移したように、じんわりとあたたかい気さえした。

「起きましたか」

低く、まだ少し眠たげな声がして、私ははっと振り向いた。

恒一が、すぐそばで私を見ていた。

寝起きなのに不思議なくらい落ち着いた目。

その瞳の奥に、昨夜の熱の名残がまだある。

私は言葉を失ったまま、薬指を見せるように少し持ち上げた。

「……これ」

恒一はごく自然に答えた。

「似合ってます」

「そういう問題じゃないわ」

思わずそう返すと、彼は少しだけ笑った。
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